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沿革

公益財団法人民事紛争処理研究基金の設立に際して

私どもの民事紛争処理研究基金は、この度財団法人として発足いたしました。この基金は、民事紛争の処理に関する理論的・実務的又は実証的研究を助成し、その学術研究の振興に資するとともに、わが国の民事紛争処理制度のより健全な発展に役立つことを目的としています。

現代社会は、科学技術の進歩、社会の複雑化、国際交流の増大等によって、公害・薬害・医療過誤等のいわゆる現代型訴訟や、環境をめぐる地域的紛争、消費者問題、国際的取引紛争、倒産事件、労使紛争など多数の解決困難な紛争を惹起させております。

他方、紛争処理のための制度も、伝統的な司法裁判所だけではなくて、国や自治体の紛争処理機関における調停・斡旋などのほか、国際商事仲裁協会、海運集会所、交通事故紛争処理センターなど各種の紛争処理機関が出現しており、これらに関する研究も、決して等閑にはできません。

ところが、このような民事紛争処理制度全般についての諸研究は、現在のところ必らずしも十分に行なわれているとはいえない状況にあります。
またこれらの研究は、従来主として民事訴訟法学者によって行なわれてきましたが、今後は民法や商法その他関連諸分野の研究者、さらに実務家等の協力をえて幅広く進めていく必要が痛感されます。しかしながら、なにぶんにも資金が不足しているため未だ満足のいく成果がえられていない実情にあり、われわれ研究者・実務家に与えられた社会的使命を十分に尽くしていないのではないかとの危倶の念を禁じえないのであります。

そこで、一昨年来、この種の研究の発展を願って有志が協議した結果、民事紛争処理に関する研究助成を主目的とした財団法人の設立を決意し、募金活動を始めましたところ、幸いにして、多くの方々のご理解をえ、多大のご寄附を仰ぐことができました。昨年末には募金額が当初の目標額の1億円に達し、本年1月30日付をもって文部大臣から財団法人設立の許可を受けることができました。この間、各方面から多大のご声援、ご協力をいただきましたことを心から感謝いたしております。

私どもとしては、すでに昭和60年度の事業として若千の研究助成を行ないましたが、今後とも研究助成事業はもちろん国際交流の援助、講演会の開催等の事業をも益々充実させていくつもりであり、そのためにも、現在、2億円(すでに達成した1億円を含め)を新たな募金目標として設定し、皆様のご協力をお願い申し上げているところであります。どうかこれからも一層のご支援、ご協力を賜わりますようお願い致します。

民事紛争処理研究基金報 1986・5 第1号より抜粋

公益財団法人への移行

2011年6月の理事会評議員会で公益法人移行が承認されてから2年近くが経過し、ようやく公益財団法人への移行が認可された。この間、政府の担当者の変更があり、申請書の出し直しがあり、政府からの指示による申請書の細かな修正があり、大変な作業であった。

申請作業に当たってくださった税理士の鈴木雅博先生、同じく税理士の近藤正邦先生、司法書士の猪股秀章先生には大変にご苦労を掛けた。また、事務局の権藤キミ子さんにも大変な作業をしていただいた。関係者に厚く御礼申しあげる次第である。当財団は、その目的からも実体からもこれまでの活動の実績からも当然に公益財団法人としての資格を備えている。したがって認可が下りて当然とも考えられる。

しかし、申請作業の実体は決して楽なものではなく、手続に係わった先生方や権藤さんの苦労は大変であった。 さらには、基金報26号の巻頭言に梅本先生がお書きになっていらっしゃるように 「とりわけ、その設立につき、目的と使命につき、公益性が認められることは、決して単純なことではないし、 一朝一夕に成し遂げられるものではない。」現在当財団が、当然に公益法人に認定されるべき資絡を備えていることは設立当初からの多くの方々の努力と協力があったからこそ、公益法人移行の認可が下りたのである。

移行が認可されたこの記念すべきときに、理事長の職にある私としては、また改めて身の引き締まる思いである。とくに、設立当初のいきさつを知らない私としては、この基金報のバックナンバーの巻頭に書かれた諸先輩の言葉を拳々服膺し、当財団の発展に微力をつくしたいと考えている。

民事紛争処理研究基金報 2013・6 第28号号外より抜粋

公益財団法人民事紛争処理研究基金創立30周年を祝う

当財団は、1986年(昭和61年)1月30日に創立(同年2月8日登記)し、今年で、30周年を迎えました。その間の研究助成総件数は372件、助成金総額は1億7463万円(年平均581万 円余。1件あたりの助成平均額47万円弱)に達した。また創立記念講演会も、時宜を得た題目で毎年欠かさず行われました。初期から、基本財産1億円という、ささやかな財団でありましたが、このような実績を残し、今も存続していますことは、創立期に関係した筆者として、慶賀に堪えません。20周年記念の基金報19号で、常務理事だった畔柳達雄さんが、「『小さな巨人』の『大きな成果』」と称していただいたとおりです。

財団を支えてくださった方々は数えきれません。貴重な寄付金を拠出していただいた方々の総数は867件(企業関連246件、個人・法律事務所483件、日弁連・司法書士会・公証人会40件、また倒産・再生法制研究奨励金関係では98件)です。また理事、評議員、また選考委員会のメンバーとして、世代交代を繰り返しながら、管理運営に携わってくださった方々も、半端な数ではありません。さらに、創立当初、経済はまだバブル景気に沸わいていました。しかし、数年ならずしてバブル崩壊、低金利時代が長期化し、運営資金の捻出に知恵を絞った時代が長く続きました。これを何とか乗り切った事務局の懸命の努力も、忘れることはできません(2014年3月31日の資産残高は1億7984万円余)。これらの皆さんに、あらためて敬意を表したい。

当財団の創立への動きは、故吉川大二郎先生から、若手研究者のためにと民事訴訟法学会に1300万円のご寄付をいただいたことに始まり、先生の御意思を、新たに財団を作って継承しようとの思いから、同学会員を核としながらも民商法分野の方々の協力も得て、募金活動を始めたことによります(詳細は、新堂『民事紛争処理研究基金の設立経過報告』 基金報1号)。

研究助成の範囲も、民事法全体を視野に入れていました。理事長加藤一郎先生の「第10回研究助成事業を迎えて」(基金報9号)をみますと、1992年の「民事訴訟法施行100年記念シンポジウム」への助成もありましたし、研究題目も、民事訴訟法学に限らず、実体法学、法社会学、経済学等の研究にも及び、かつ理論と実務にわたっていました。2007年からは、通称「高木賞」といわれる、倒産・再生法制研究奨励金事 業も始まりました。30年を振り返りますと当財団は、研究分野の深化・連携・拡大のために、ささやかなりとも貢献できたのではないかと思う次第です。

今後も若手研究者・実務家の活発な研究活動を大いに期待していますが、基礎理論や伝統的な課題に、また新たな地平を切り開く野心的な研究に、実態調査研究に挑戦していただきたい。このような研究活動に、わが財団がなにがしかのお手伝いができますよう、祈ってやみません。おわりに30周年記念号にも、畔柳さんの言葉を繰り返します。
「小さな巨人は永遠です」。

民事紛争処理研究基金報 2015・6 第30号より抜粋